クリントンはなぜ福祉の充実で選挙に負け、福祉の削減で勝ったのか

クリントン政権の直面した課題は、以前から続く「無保険者の増大」と「医療費の高騰」でした。これらを解決するための案として、①シングルペイヤー案②プレイ・オア・ペイ案③管理された競争の3案がありました。こうした論争の中で、①~③の折衷案となりました…

なぜトルーマン、クリントンは皆保険に失敗し、オバマは成功したのか

トルーマン政権時の国民皆保険の導入に失敗した要因としては、アメリカ医師会とウィティカー&バクスター社による公的健康保険反対キャンペーンが挙げられます。また、公的保険反対にとどまらず、民間保険拡大キャンペーンも行いました。更に労働組合すらも…

アベノミクスと金融政策―アベノミクスがもたらす結果とは・・・

安倍政権になってから金融政策に関する話題が非常に多いので、金融政策についてまとめたいと思います。大学の講義で金融政策に関する面白い話も聞けたので、それについても言及します。 ※随分前に書いたものですが、金融政策の説明等は役立つと思います。金…

選挙制度について②

・J.S.ミルの比例代表制論 「代議制統治論」(1861):当時のイギリスが多数代表制で、大政党の候補者ばかりが当選していた。これを少数派の「事実上の選挙権の剥奪」として批判 ⇒「数に比例した代表」こそが「民主主義の第一の原則」であるべきと主張 そこ…

選挙制度について①

・選挙制度の「利害得失」論 選挙制度の議論においては、それぞれの制度に一長一短があり、ベストなものはないという議論になりがちです。 例)小選挙区制:政権が安定しやすい、死票が多いなど 比例代表制:死票が少ない、政権が不安定など ⇒だから両者を組…

投票所までの距離は結構大事という話

随分前の記事で申し訳ないのですが、再掲します。松山市内の大学に、全国初の期日前投票所が設けられたそうです。全国初というのは意外でした。なんでもっと早くできなかったのか…。 それはさておき、この記事を読んで投票所までの距離って案外大事だなーと…

若者的に、投票は何のためにするのか

投票はなんのためにするのか。ものすごく重要な問いですよね。最近個人的に思っていることを、若者的視点からまとめたいと思います。 以前は、投票は自分の望むものを政策的に実現してもらうために行うものだと思っていました。例えば、「学費を払うのが厳し…

アダム・スミスの生きた時代―なぜ分業を提唱したのか

前回はアダム・スミスが『社会的分業』を提唱したという記事を書きました。今回は、なぜスミスは分業を提唱したのか、について書きたいと思います。 ○スミスの生きた時代 ・18C、イギリス:『重商主義』が基本的な経済上の考え方であった。 ※重商主義…政府が…

社会的分業と市場の成立

経済学とは:みんなが豊かになるためにはどうすべきかを考える学問 その創始者とも言えるのがアダム・スミスで、みんなが豊かになるために分業を唱える ・未開社会から分業社会へ 未開社会:採集や漁労などで生活をし、余剰(蓄え)がない状態 →イメージとして…

社会派ちきりんの世界を歩いて考えよう!

本書は、ちきりんさんが海外を訪れた時に実際に見たもの、感じたもの、現地の方と話したことなどをもとに、彼女自身が気づいたこと、考えたことがまとめられたものです。 まだ海外に行ったことがない私にとって、海外に行ったような気分にさせてもらえる本で…

あなたにしかできない仕事とトリコ

「あなたにしかできない仕事」を無くすために必要なこと - 脱社畜ブログ 「あなたにしかできない仕事」を「誰でもできる仕事」に変えることは、「あなたにしかできない仕事」を一人で抱えるよりも遥かに価値があることだ。そういう意味で、この手の「標準化…

税制の機能

税制の機能は主に3つあります。①公共サービスのための財源調達②所得の再分配③経済の安定化・景気調節機能です。①については、誰が、どの程度、どのように負担するかが重要となります。この点につき、利益説と能力説という二つの考え方があります。前者は、国…

現代日本の生活保障システム

日本の生活保障システムは、妻が家事・育児を担うという「ジェンダー関係」を基軸として、「男性稼ぎ主」に対する所得移転中心の福祉国家であるという主張です。今日においてはこの男性稼ぎ主型という従来の生活保障システムが機能不全に陥っているだけでな…

スウェーデンモデルの変容

スウェーデンモデルとは、1951-76年のレーン・メイドナー・モデルに代表される、生産性の低い企業や産業部門を排除し、労働力を職業訓練により生産性の高い分野に移動させ、低インフレ率を維持しつつ完全雇用を実現する政策体系です。このような政策が体系化…

北欧諸国の財政システム―目標と制度設計

・財政健全化を実現している3つの理由 1)適切なマクロ経済運営や成長戦略による高い成長率 2)歳入基盤がしっかりしている 3)中期的タームで歳出をコントロールする法的枠組み 1) 企業の国際競争力を高め、高い経済成長を実現することが高福祉システムを維持…

スウェーデン―労働市場の特徴

特徴: ① 就労を促す社会的規範・社会保障制度 ② 高い労働組合の組織率を背景とした労使協約重視の労使関係 ③ 労働移動を促進する社会合意・仕組みの存在 ①:アルベツリーニエン(就労原則) ⇒社会保障制度の受益者に対して、必要な職業訓練や人材投資によって…

『生活保障』読了

本書は、「生活保障」という視点から、日本の社会が直面している状況を整理し、問題を打開する道筋について考えようとしたものです。生活保障とは、年金、医療、介護などのいわゆる社会保障だけでなく、これらを雇用と結びつけることで経済成長を促して実現…

福祉国家の形成をめぐる諸理論

福祉国家の形成をめぐる議論として、①ウィレンスキーによる「社会経済視角」②コルピらによる「権力資源の動員」③エスピン・アンデルセンによる「連合の理論」が挙げられます。ウィレンスキーは社会経済視角から、社会保障支出の対GNP比が増大する要因を検討…

『財政赤字の淵源』読了

日本における膨大な財政赤字の原因を歴史的アプローチから解明した上で、今後の人々の生活を支える財政制度をどのように設計していくかを提言した書。第Ⅰ部では戦時期の高橋財政や大蔵省統制、占領期の財政運営などを切り口に、日本の財政の原型がどのように…

財政の機能と役割

現代財政の機能は、①資源配分機能②所得再分配機能③経済安定機能の三つに分けられます。①は経済社会の資源をどの程度まで公共部門に振り向け、また公共部門のなかでどのような用途に効率的に配分するかという機能です。民間部門における経済主体の活動には、…

財政民主主義

財政とは、国や地方自治体などの公共部門の経済活動のことであり、民間部門の財政とは区別されます。しかし、近代市民国家が形成される以前の絶対王政国家などでは、公的な財政と民間金融は一体でした。国王は公債を発行して民間金融業者から借金をし、政治…

財政の原則―民間との違い

財政とは、国や地方自治体などの公共部門における経済活動のことです。民間部門の企業や家計と同じように、財源を調達し、それをもとに投融資を行い、財産を所有し管理するというような経済活動を行っています。 民間部門の企業や家計との違いを指摘するとす…

勝ち続ける意志力

プロ・ゲーマー梅原大吾の自伝。本書を最初に手に入れたときは、タイトルからの印象でひたすら結果にこだわってストイックに取り組む姿勢などが書かれているのかと想像していました。確かに前半では予想通りめちゃくちゃストイックで、「才能すらもなぎ倒し…

北欧と日本の違い―国民負担率から見る社会システム

北欧の国民負担率についてまとめてみました。 国民負担率とは… 税と地方税を合わせた租税額の国民所得に対する負担率(租税負担率)と、年金など社会保険料の国民に対する負担率(社会保障負担率)を合計したもので、最終的に国民がどの程度負担しているのかを見…

人間は目の前に訪れた運命に身を委ねるしかない

「えっ、私が自分で会社を立ち上げるんですか?」:日経ビジネスオンライン ライフネット生命保険、出口さんの記事です。 その中での一文、「人間は目の前に訪れた運命に身を委ねるしかない」 まだ社会人にすらなっていないぺーぺーの若造ですが、なんか感覚…

北欧の失業給付

北欧の失業給付についてまとめてみました。 少し古いので、新しい制度になっていたら教えてください。 ○スウェーデン(2005) ・給付額は失業前所得の約80%、給付期間は約14か月 ○デンマーク ・給付額は失業前所得の約90%、給付期間は最大4年間 ※鈴木優美…

学び続ける力

学ぶことの意義を認識させられる、池上彰さんの書。第一章では、NHKを辞めてからどんな勉強を、どのように勉強してきたかを中心に書かれています。第二章では、東工大で教えることになり、どうしたら社会の事を学生に身近に感じてもらえるかを工夫しながら講…

歴史を学ぶ意義

最近は社会科の勉強関係で記事を上げているので、今日もそれ関連で一つ。 最近、歴史(日本史、や世界史など)を学ぶ意義について、結構考えます。私は正直に言って高校を卒業して大学に入学するまでよくわかりませんでした。「過去なんて学んでどうすんだ。俺…

「未来の働き方を考えよう」

自分の現在の働き方に本当に満足しているか、もしくは今の働き方を続けて今後本当に満足できるかどうかを問いかける書。決して今の働き方を否定するものではなく、もう一度深く考え直してみようと提案する書。 本書の前半は、さまざまな社会変化(長寿化、家…

勉強は重要という話

勉強することはやっぱり重要だなと思ったという話です。ここでいう勉強とは、自分が大学で勉強している内容との関係から、分野としては政治、経済を中心とする社会科学のことです。また、勉強=知識を詰め込むだけでなく、詰め込んだ知識(情報)をもとに「…