2013-10-01から1ヶ月間の記事一覧

現代日本の生活保障システム

日本の生活保障システムは、妻が家事・育児を担うという「ジェンダー関係」を基軸として、「男性稼ぎ主」に対する所得移転中心の福祉国家であるという主張です。今日においてはこの男性稼ぎ主型という従来の生活保障システムが機能不全に陥っているだけでな…

スウェーデンモデルの変容

スウェーデンモデルとは、1951-76年のレーン・メイドナー・モデルに代表される、生産性の低い企業や産業部門を排除し、労働力を職業訓練により生産性の高い分野に移動させ、低インフレ率を維持しつつ完全雇用を実現する政策体系です。このような政策が体系化…

北欧諸国の財政システム―目標と制度設計

・財政健全化を実現している3つの理由 1)適切なマクロ経済運営や成長戦略による高い成長率 2)歳入基盤がしっかりしている 3)中期的タームで歳出をコントロールする法的枠組み 1) 企業の国際競争力を高め、高い経済成長を実現することが高福祉システムを維持…

スウェーデン―労働市場の特徴

特徴: ① 就労を促す社会的規範・社会保障制度 ② 高い労働組合の組織率を背景とした労使協約重視の労使関係 ③ 労働移動を促進する社会合意・仕組みの存在 ①:アルベツリーニエン(就労原則) ⇒社会保障制度の受益者に対して、必要な職業訓練や人材投資によって…

『生活保障』読了

本書は、「生活保障」という視点から、日本の社会が直面している状況を整理し、問題を打開する道筋について考えようとしたものです。生活保障とは、年金、医療、介護などのいわゆる社会保障だけでなく、これらを雇用と結びつけることで経済成長を促して実現…

福祉国家の形成をめぐる諸理論

福祉国家の形成をめぐる議論として、①ウィレンスキーによる「社会経済視角」②コルピらによる「権力資源の動員」③エスピン・アンデルセンによる「連合の理論」が挙げられます。ウィレンスキーは社会経済視角から、社会保障支出の対GNP比が増大する要因を検討…

『財政赤字の淵源』読了

日本における膨大な財政赤字の原因を歴史的アプローチから解明した上で、今後の人々の生活を支える財政制度をどのように設計していくかを提言した書。第Ⅰ部では戦時期の高橋財政や大蔵省統制、占領期の財政運営などを切り口に、日本の財政の原型がどのように…

財政の機能と役割

現代財政の機能は、①資源配分機能②所得再分配機能③経済安定機能の三つに分けられます。①は経済社会の資源をどの程度まで公共部門に振り向け、また公共部門のなかでどのような用途に効率的に配分するかという機能です。民間部門における経済主体の活動には、…

財政民主主義

財政とは、国や地方自治体などの公共部門の経済活動のことであり、民間部門の財政とは区別されます。しかし、近代市民国家が形成される以前の絶対王政国家などでは、公的な財政と民間金融は一体でした。国王は公債を発行して民間金融業者から借金をし、政治…

財政の原則―民間との違い

財政とは、国や地方自治体などの公共部門における経済活動のことです。民間部門の企業や家計と同じように、財源を調達し、それをもとに投融資を行い、財産を所有し管理するというような経済活動を行っています。 民間部門の企業や家計との違いを指摘するとす…

勝ち続ける意志力

プロ・ゲーマー梅原大吾の自伝。本書を最初に手に入れたときは、タイトルからの印象でひたすら結果にこだわってストイックに取り組む姿勢などが書かれているのかと想像していました。確かに前半では予想通りめちゃくちゃストイックで、「才能すらもなぎ倒し…

北欧と日本の違い―国民負担率から見る社会システム

北欧の国民負担率についてまとめてみました。 国民負担率とは… 税と地方税を合わせた租税額の国民所得に対する負担率(租税負担率)と、年金など社会保険料の国民に対する負担率(社会保障負担率)を合計したもので、最終的に国民がどの程度負担しているのかを見…

人間は目の前に訪れた運命に身を委ねるしかない

「えっ、私が自分で会社を立ち上げるんですか?」:日経ビジネスオンライン ライフネット生命保険、出口さんの記事です。 その中での一文、「人間は目の前に訪れた運命に身を委ねるしかない」 まだ社会人にすらなっていないぺーぺーの若造ですが、なんか感覚…

北欧の失業給付

北欧の失業給付についてまとめてみました。 少し古いので、新しい制度になっていたら教えてください。 ○スウェーデン(2005) ・給付額は失業前所得の約80%、給付期間は約14か月 ○デンマーク ・給付額は失業前所得の約90%、給付期間は最大4年間 ※鈴木優美…

学び続ける力

学ぶことの意義を認識させられる、池上彰さんの書。第一章では、NHKを辞めてからどんな勉強を、どのように勉強してきたかを中心に書かれています。第二章では、東工大で教えることになり、どうしたら社会の事を学生に身近に感じてもらえるかを工夫しながら講…

歴史を学ぶ意義

最近は社会科の勉強関係で記事を上げているので、今日もそれ関連で一つ。 最近、歴史(日本史、や世界史など)を学ぶ意義について、結構考えます。私は正直に言って高校を卒業して大学に入学するまでよくわかりませんでした。「過去なんて学んでどうすんだ。俺…

「未来の働き方を考えよう」

自分の現在の働き方に本当に満足しているか、もしくは今の働き方を続けて今後本当に満足できるかどうかを問いかける書。決して今の働き方を否定するものではなく、もう一度深く考え直してみようと提案する書。 本書の前半は、さまざまな社会変化(長寿化、家…

勉強は重要という話

勉強することはやっぱり重要だなと思ったという話です。ここでいう勉強とは、自分が大学で勉強している内容との関係から、分野としては政治、経済を中心とする社会科学のことです。また、勉強=知識を詰め込むだけでなく、詰め込んだ知識(情報)をもとに「…

日本企業が低迷する理由

先日、コトラーという人が日本で講演を行ったそうです。この人は現代マーケティングの父と呼ばれているそうで、マーケティング関係では有名な人みたいです。私はたまたま下記の記事を見つけて読んだだけなので、彼のことは正直全く知りません。しかし、この…

失敗の本質

大東亜戦争における諸作戦の失敗を、組織としての日本軍の失敗ととらえ直すことで、現在における様々な組織一般への教訓にしようと試みた書。第一章では失敗の事例研究として6つの諸作戦(ノモンハン事件、ミッドウェー作戦、ガダルカナル作戦、インパール作…

若者の投票率を上げれば、若者の声は反映されるか

今回の参院選からネット選挙が解禁となり、注目を浴びています。この目的は選挙運動の幅を広げることや政治の関心を高める(特に若者)ことで投票率を上げることなどだと思われます。若者の政治的関心を高めることはもちろん重要ですが、ここではもう一歩踏み…

なぜ待機児童が増えたのか

待機児童について、横浜市の待機児童ゼロ報道もあって少し気になったので考えてみました。というのも、待機児童がいっぱいで大変だ!とよく騒がれますが、そもそもどうして待機児童が増えたのかがイマイチわからないからです。ずいぶん前から少子化対策につ…

法人税減税をどう見るか

法人税減税の要求はずいぶん前から言われています。下記の参考資料にもあるように、財界は法人税減税を求めています(若干古いですが現状は変わっていません)。今回は新聞記事を皮切りに法人税減税に効果はあるのかについて、自分なりの考えを述べたいと思い…

戦後から現在までの概観と時期区分―財政赤字の第2次累増期(1990-現在まで)

5-1 バブル崩壊から小泉政権まで 90年度当初予算で赤字国債依存度がゼロになって以来、これは93年まで継続しましたが、バブル崩壊後の長引く景気低迷を打開するために行われた大規模な財政出動などを背景に、94年以降は再び赤字国債を抱えることになります。…

戦後から現在までの概観と時期区分―財政再建期(1980-1990)

4-1臨調の発足とシーリング方式 一般消費税の導入に失敗したことを受け、政府は財政再建を増税以外の道に求めました。その第1が歳出削減であり、第2が不公平税制の是正です。とりわけ歳出削減に重点を置いた方向で、本格的な行政改革をスタートしました。 80…

戦後から現在までの概観と時期区分―財政赤字の第1次累増期(1975-1980)

3-1財政赤字累増の背景と財政再建のはじまり 75年から80年は財政赤字の累増期です。財政赤字の本格的な累増は、75年度補正予算から始まりました。第1次石油ショック以降の景気低迷により、赤字公債の発行が避けられなくなり、これを皮切りに公債依存度も急上…

戦後から現在までの概観と時期区分―高度成長期(1955-1975)

2-1均衡財政期 50年代中頃に入ると、本格的な経済成長の局面を迎えることとなりました。この経済成長は他の先進諸国に類をみないほどの成長率だったため、一般に「高度成長」と呼ばれます。高度成長がもたらされた要因としては、第1に日本経済の供給・需要の…

戦後から現在までの概観と時期区分―戦後復興期(1945-1955)

1、混乱期 1945年の終戦以降の日本経済は、戦後復興の時代でした。戦後直後の日本経済はまさに壊滅的と言うべき状況で、戦勝国からの大量の援助物資があったものの、生産財や消費物資は著しく不足していました。また、戦時中の臨時軍事費特別会計の支出が戦…