選挙制度について①
・選挙制度の「利害得失」論
選挙制度の議論においては、それぞれの制度に一長一短があり、ベストなものはないという議論になりがちです。
⇒だから両者を組み合わせた制度が良いという議論になり、現行の小選挙区比例代表並立制になっているという部分があります。
しかし、本来であればこうした技術的な議論ではなく、民主主義をどのようなものと捉えるか、という「理念」で見ることが必要
・民主主義思想と選挙制度の類型
「理念」として見た場合、選挙制度の分類は基本的に二択
⇒多数代表制か比例代表制
多数代表制の代表的な論者:吉野作造、W.バジョット
彼の思想は、天皇主権の立場から議会政治、政党政治に反対した穂積八束や上杉慎吉に対する批判からきている。
比例代表制の長所:①費用を「最小限度に節約」できる
②選挙結果を「できるだけ正確に国民の意向を反映する」
③国民が「政党を監督し、判断を表示しうるようにする」⇒国民による政策コントロール
⇒この立場は吉野などの政治主導を重視する立場から批判
⇒彼の由来はイギリスの二大政党制論
主張の特徴:①責任内閣制、政党内閣制の「巧用」がうまくいくのは二大政党制の国
②「聡明なる先覚者」の指導を重視
⇒選挙は「政治的学習」「政治教育」の機能を担うべきもので、選挙民はより優れた人格の指導者に接することで、自らの人格を高めていくべき
③民主政治を多数決の政治と考える
⇒小選挙区は少数派を切り捨てるという批判に対しては、「浅薄なる考え」と一蹴。意見を主張する場が奪われているわけではないから問題なし。選挙で負けたなら少数者はさらに努力して勝利を目指すべき
※比例代表制を完全否定しているわけではない
⇒「認めるべき唯一の場合」には比例を導入する理由がある。それは「多数少数の関係が初めから社会に固定し、政治上いかに努力してもその間に融通の途が絶対にない場合」
Ex.宗教、民族など
日本には「かかる固定的利益を有する特別団体はない」として導入理由はないと主張