『この世でいちばん大事な「カネ」の話』読了―②


読みました。


『この世でいちばん大事な「カネ」の話』読了―① - パンダのぼやき



上記書評の続きです。今回は第3章から。本章は著者が自力である程度稼げるようになってからの話。お金を持ってから、「カネの落とし穴」つまりはギャンブルを知るようになります。

ギャンブルは大人が負け方を学ぶもの

だから思うんだけどギャンブルっていうのは、授業料を払って、大人が負け方を学ぶものじゃないかな。その授業料を「高い」って思うんなら、やらないほうがいい。まして本気で儲けようだなんて思うほうが、まちがい。

人生だってそう。勝つことより、負けることのほうがずっと多いし、負けてあたりまえ。わたしにとってのギャンブルは、そういうときの「しのぎ方」を、型破りの大人たちから学んだところだった。


ギャンブルというのは、そもそもの仕組みとして「親」、つまり主催している経営側が一番儲かるようになっています。そうでなければ経営自体が成り立ちません。ちょっと考えれば当たり前の話なのですが、やる人は絶えない。なぜか?

それは、ギャンブルが本来は「そういうものだとわかっているけど、だまされることを楽しむ」という、大人の粋な遊びだからだと思う。


つまり、ギャンブルというのは稼ぐためのものではなく、ダマされることを楽しむ、勝つか負けるかという緊張感を楽しむものだということです。でも現実は逆で、お金がないからギャンブルで何とかしようと考える。この考え方は危険です。

ギャンブルっていうのは、リスクと魅力が表裏一体で背中あわせになっているものなんだよ。


確かに高揚感という魅力はあるけれど、その分リスクも大きい。頭ではわかっていても、その高揚感によってその場では楽観的になってしまうのかもしれません。

「カネ」とは「人間関係」のこと


ここもすごく大切だと思ったので引用。

お金との接し方は、人との接し方に反映する。
お金って、つまり「人間関係」のことでもあるんだよ。
お金をいつも自分では出さないでいると、友だちとも対等じゃいられなくなっちゃう。でも、出せないときだってあると思うから、そういうときは、友だちに「これこれこういう理由で、今日は出せないんだ」って、正直に言ってみたらいいと思う。


「今日は出せない」という状況の時に、「次な!」と笑って払える関係性をお互いに作って行きたいと思います。


自分の「真ん中」はどこにあるのか


続いて第4章。働くこととお金の関係。



「自分のやりたいことは何なのか?」「なぜ働くのか?」。こうした問いというのは、割と最近出てきたもののような気がします。豊かになったからこそ出てくる問い。はてなブロク界隈でもしばしばみかけます。でも知っての通り、この問いに対する答えは簡単には見つかりません。そこで著者が提案する考え方が「カネ」という視点を持つこと。それが以下。

「カネとストレス」、「カネとやりがい」の真ん中に、自分にとっての「バランス」がいいところを、探す。


本書で出てくる例は以下のような感じ。

・お金はもらえるけれど、ストレスも割と大きい仕事
・ストレスはなさそうだけれど、生活費を稼ぐため、ただ食べるだけの仕事


この2つの間に自分が心地よい場所を探そう!というのが著者の提案です。これに加えてなおイメージがはっきりしないなら、「人に喜ばれる」という視点も加えると良いといいます。



本来であれば「お金ももらえて、ストレスも少なくて、人に喜ばれる仕事」というのが理想だと思うのですが、そんなものは恐らくないのでしょう。また、「人に喜ばれる」という視点は、逆に「人に喜ばれない仕事」ってなんだろうとちょっと考えてしまいました。人に喜ばれなければもはや仕事ではないような気がするので。「喜んでもらえる」というのが、例えば「喜んでもらえるというのが目の前で直接わかる仕事」「目の前で喜んでもらえることはないけれど、大多数に喜んでもらえるであろう仕事」というようにもっと具体的に書かれたほうがわかりやすいかなーと思いました。ただ、働き方を考える上で1つの参考になる提案だと思います。


働けるということが人を「貧しさ」から救う


第5章ではアジアの新興国の状況を持ち出しつつ、働けることの幸せを説いています。

「自分は何をしたいか」を考えるのも、もちろん大切なこと。でもその前に、キミたちに聞いてみたい。
働けることのしあわせ、働く場所があることのありがたさについて、考えてみたことがありますか?


伝えたいことはよくわかっているつもりです。働けることそれ自体が幸せだと1度は考えることは大切だと思います。ただ、敢えて批判的に言えば、この主張をそのまま日本に持ち込むことは危険です。経営者がこれを言い出し、労働者もこれに同意してしまう時、労働条件は悪化しやすい。やはりアジアの新興国と日本の社会状況はぜんぜん違うので、この話を持ち出すのはちょっとどうかなと。とはいえ、著者もダメなときは逃げていいともおっしゃっているので、その辺は心得ているようでよかったです。

まとめ


社会人になる前のタイミングで読めて良かったなぁと思っています。本書でも触れられていますが、日本ではなぜかお金についてはあんまり話すべきではないというか、タブー視されている雰囲気があります。でも、お金について真剣に考えることはゲスいとかそういうことではなく、本当に大切だと思います。生きている限り必ずついて回るものですからね。それについて語ろうとしないのはやっぱり不健全な気がします。本当に色々と考えさせられました。またどこかのタイミングで再読したいと思います。