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国民負担率の比較―日本と北欧

メモ 政治・経済・社会・歴史

金融関係の勉強が一息ついたので、今回は私の卒論関係でいくつかまとめたいと思います。その第1弾は国民負担率の比較にします。

国民負担率とは何か


国民負担率とは、国税地方税を合わせた租税額の国民所得に対する負担率(租税負担率)と、年金など社会保険料の国民に対する負担率(社会保障負担率)を合計したもので、最終的に国民がどの程度負担しているのかを見ることができる指標です。もっと簡単に言ってしまえば、総所得のどれくらいの割合を税金や保険料で持っていかれるのかを表す指標です。具体的に見たほうがわかりやすいので、以下のグラフを中心に話を進めます。

日本と北欧の国民負担率の比較


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上記グラフは財務省HPを参考に作ったものですが、これによれば、北欧諸国の国民負担率はデンマークが67.8%、フィンランドが57.9%、ノルウェーが55.4%、スウェーデンが58.9%と総じて高い水準です。他方の日本は38.5%となっており、北欧諸国と比べると低水準です。



この数値からわかることは、総所得からどれだけの税金や保険料が徴収されているかということです。つまり、北欧諸国は総所得の6割近く(デンマークに至っては7割近く)が税金や保険料として徴収されているということです。逆に言えば、総所得のうち、手元に残る所得(可処分所得)は4割程度しかないということです。他方の日本は、総所得から約4割の徴収で、手元に残る所得(可処分所得)は約6割です。



このように国民負担率だけを見ると、日本の所得の使い道の自由度は北欧諸国より高いように見えます。しかし、実際にはそうとも言い切れない部分があります。というのも、国民負担率は税金や保険料だけの負担の大きさを表すものであって、税・保険料以外の生活に必要な固定費(例えば住宅費、教育費、医療費、介護費など)を織り込んだものではないからです。国民負担率にこうした固定費も加味した値は、国民の実質負担率と呼ぶことができそうです。実際にそういう研究もあります*1。これについては調べきれていないのでまた改めてということで。

租税負担の重視


上記グラフでもう1つ注目したい点があります。それは北欧諸国では租税負担を重視しているということです。北欧諸国は国民負担率のうち、社会保障負担率の占める割合は2割から3割程度、デンマークに関しては国民負担率のほとんどが租税負担で賄われていることがわかります。他方の日本は、租税負担率のほうが高いものの、4割以上は社会保障負担、すなわち社会保険によって賄われています。



そもそも社会保険とは、国民が生活する上でのリスク、例えば疾病、介護、失業、労災などに備えて、事前に保険に入って保険料を拠出することで、リスクが起こった時に現金または現物給付を受け取ることができるという仕組みです。つまり社会保険とは、拠出した分は給付を受けられるが、拠出しなければ給付は受けられないという性質があります。日本の公的年金制度を考えればわかりやすいと思います。日本の公的年金制度は保険料を滞納してしまうと、低年金もしくは無年金に陥ってしまいます。



こうした性質を持つ社会保険の割合が低い北欧諸国の負担構造の意味することは、個々人の支出と権利には基本的に連関がないということを示しています。言い換えると、社会保険のように、拠出した分は給付を受けられるが、拠出しなければ給付は受けられないという関係ではなく、本当に必要としている人には、拠出しているか否かにかかわらず給付するという関係が成り立っています。



日本の具体例でいうと生活保護制度が当てはまります。生活保護を受けようとする時に、「あなたは税金を払っていないから給付を受けることはできません」とは言われません。要するに北欧の社会構造は、金銭的に余裕のある人から余裕のない人へと配分される所得再分配を重視した負担のあり方が重視されている仕組みなのです。

まとめ

・北欧は国民負担率が高い
・日本の国民負担率は北欧と比べて低いが、実質負担率で見ると変わらない?
・北欧は租税負担を重視、再分配的要素が強い


今回は国民の負担に焦点を当ててまとめてみました。ということで次回は、北欧に関する話題で割と有名な受益(主に社会保障)についてまとめたいと思っています。これだけの負担が受け入れられている背景には、それ相応の受益があるというのがキーになります。


参考資料
財務省OECD諸国の国民負担率(対国民所得比)』
http://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/condition/238.htm(閲覧日:2014年2月27日)

消費税25%で世界一幸せな国デンマークの暮らし  角川SSC新書 (角川SSC新書)

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*1:井手英策「財政赤字の原因は不十分な支出」『週刊エコノミスト』2012年11月27日号、49頁、「日本と北欧諸国における実質負担率」参照。