『税金 常識のウソ』読了

読みました。

税金常識のウソ (文春新書)

税金常識のウソ (文春新書)

内容


本書の構成は以下のようになっています。

序 章 「ギリシャ悲劇」の開幕
第1章 租税国家の危機
第2章 租税とは何か
第3章 租税の「顔」を知る
第4章 租税の仕組み
第5章 所得税中心主義の動揺
第6章 日本の失われた20年
第7章 国と地方の「分かち合い」
終 章 未来のヴィジョンを描く


序章、第1章は導入的な位置づけで、ギリシャ危機を議論の出発点として、現代は「租税国家の危機」だと指摘されています。第2章、第3章は、そもそも租税とは何か、租税はどのようにして生まれたのか、税が課される根拠は何か、租税の公平とは何かなどについてまとめられています。第5章、第6章では、主に1990年代の日本の税制改革の方向性に焦点を当てており、この時期の減税によって財源調達能力が低下し、財政赤字につながったと指摘されています。第7章、終章は、国と地方の関係についても考察した上で、今後の日本のあるべき税制の姿について提言されています。

感想


はしがきによれば、本書は租税の基礎を学ぶ入門書という位置づけで、租税に少しでも興味を持ってもらえるように書かれたとのことですが、正直入門書にしては小難しく書きすぎかなぁと思いました。税制度それ自体がそもそも難しいものなのかもしれませんが、もう少し簡易に説明できるような気がしましたし、入門書としては説明不足な気もしました。



例えば、所得税に関して、所得税がフラット化(累進性の緩和)してきているというのはわかるのですが、そもそもなぜフラット化するのが問題なのか、もっと言えばそもそも所得税とは何なのか、所得税の機能は?などなど、こういったところから説明していかないと、これから税金をやろうとする人にとっては難しいという印象を与えてしまうと思います。税金論に限らず、勉強し始める最初の段階で相手を引き込むためにはわかりやすさが決定的に重要だと思うので、もう少し噛み砕く必要があったように思います。したがって、これから税金を勉強しようと思う人は本書を手にするのはあまりよろしくないかと^^;



また、内容的にも偏っている印象を受けました。著者の主張はわかりますが、「こうあるべきだ」感がちょっと強い。入門書というのならば、もう少し中立的に書くべきだと思いました。まぁ、タイトル的に中立性を保つ感じでもないので、批判的に書かれるのは予想できるかとは思いますが。



ここまで少し批判的になりすぎましたが、入門書としての位置づけでなければ、勉強になる部分はあると思います。特に1990年代の日本の減税政策が現在の膨大な借金につながったという部分は私も同意するところです。終章の今後のヴィジョンもおおむね同意です。



著者の本は何冊か読んできましたが、今回はちょっとがっかりしました。繰り返しますが、入門書としてはあまりオススメしません。ある程度の知識を持ってから読むほうが効果的かと思います。



余談ですが、著者の本でオススメはこちらですね。


「分かち合い」の経済学 (岩波新書)

「分かち合い」の経済学 (岩波新書)


税金論ではないですが、全体として今後の日本の進むべき大きな方向性を示した本です。こちらでは非常に勉強させていただきました。


税金常識のウソ (文春新書)

税金常識のウソ (文春新書)