読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

『グラスホッパー』読了

読みました。




伊坂幸太郎さんの小説は何冊か読んだことがあって好きなものが多いのですが、今回に限ってはどうした伊坂!というのが個人的な感想です。


内容


主な登場人物(鈴木・鯨・蝉)が代わる代わる語り手を務めるという構成。



鈴木は妻を殺した男に復讐するために会社を辞め、男の父親が経営する会社に契約社員として入社しました。しかし、その男は鈴木の目の前でひき逃げされます。その犯人が「押し屋」と呼ばれる殺し屋の仕業で、鈴木は会社の上司に命令されるままにその「押し屋」を追ったのですが、押し屋には温かい家庭があることを知り、居場所を上司に報告できなくなりました。



他方で自殺させることが専門の殺し屋である鯨は、過去を清算するために、そしてナイフ使いの殺し屋である蝉は、手柄を立てるために押し屋を追っていました。つまり、別の目的ではあるものの、みんなが「押し屋」を追っていて、さてさてどうなる?みたいなお話です。

感想


個人的に、物語そのものはあまり楽しめませんでした。みんなで押し屋を追っていて、さてどうなるか?というのを楽しむものだと思ったのですが、鈴木・鯨・蝉の3人が代わる代わる語り手を務めるという構成上、割と先が読めてしまいます。この点でワクワク感はあんまりないのかなと。また、物語の最後も大どんでん返しがあるような感じでもなく、ヌルっと終わった感じがあり、読後感はモヤモヤ。



しかし、それぞれのキャラの会話には味や刺さる何かがあり、伊坂さんらしさが垣間見えました。例えばホームレス関連の話で、役所の担当者が

「ここで暮らされると困るのです」


と訴えたときのホームレスの返答が

「暮らしてるんじゃなくて、生きてるだけだから」


と抗議するという話や、

「『同じ場所に置かれた物は腐る』って言葉知らねえのかよ。同じ奴がずっと政権を握ってたら、腐るに決まってんだ。どうせ、誰がなっても一緒なら、それこそ、定期的に入れ替えねえとやべえだろうが。放置した水と一緒で、藻が生えて、腐っちまう。こんだけ長いこと、同じ党が仕切ってる国も珍しいんじゃねえのか」


とか。「同じ場所に置かれた物は腐る」かぁ。まぁこれは政治に限らず個人にも当てはまるのだろうなぁなどと考えたり。これらはごく一部で、なんだか考えさせられる話がいくらか散りばめられていて、これは本書の、というより伊坂さんの魅力かなと思います。



本書は物語そのものをエンターテイメントとか娯楽として楽しむというよりは、それぞれのキャラに焦点を当てて、「会話の味」みたいなものを楽しむものなのかなーと思いました。