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社会支出の比較―日本と北欧

メモ 政治・経済・社会・歴史


以前にこんな記事を書きました。


国民負担率の比較―日本と北欧 - パンダのぼやき



北欧の国民負担率は高い、税負担を重視しているというような負担を中心とした内容です。今回は受益(主に社会保障)についてまとめていきたいと思います。

社会支出とは何か


社会支出とは、詳しくは脚注のリンクを参考にしていただきたいのですが*1*2、簡単に言ってしまえばいわゆる社会保障のことで、OECD基準で定められた指標です。社会保障というと年金、医療、介護などの高齢者世代向けの支出を想像しがちかもしれませんが、社会支出は失業や住宅などの現役世代向けの支出も含めたもう少し範囲の広いもので、全9項目で構成されます。以下では北欧と日本の社会支出について表で整理しましたので、それに沿ってみていきます。

社会的支出の大きさとその内訳


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それでは上記の表1を元に話を進めます。この表は北欧諸国と日本のGDP全体に占める社会支出の割合とその内訳を表したものです。まずは社会支出の合計を見ると、デンマークが30.2%、フィンランドが29.4%、ノルウェーが23.3%、スウェーデンが29.8%、日本が22.2%となっており、ノルウェーは日本とあまり変わらないものの、北欧全体でみれば社会支出は日本より大きいです。この背景には以前にまとめた高負担があります。



次に、社会支出の内訳について見てみます。まずは「高齢」についてですが、これは老齢年金や介護サービス諸費などのことです。デンマークは8.2%、フィンランドは10.2%、ノルウェーは7.1%、スウェーデンは10.2%、日本は10.4%となっており、日本が最も大きいです。「遺族」については遺族年金をイメージしてください。これも「高齢」と同様に日本が最も大きいです。日本の社会的支出の合計のうち、半分近くが「高齢」の項目に支出されていることからもわかるように、日本は社会支出のうちの多くを高齢者に支出していることがわかります。これについては後述しますが、日本の社会支出は高齢者世代向けに偏っていると言えます。



次に「障害、業務災害、傷病」を見てみます。この項目については障害年金や傷病手当をイメージしてください。この項目では日本は北欧に比べて圧倒的に支出が小さいです。「保健」は主に医療の現物給付を表したものですが、これについては日本と北欧で大きな違いは見られません。



「家族」については日本と北欧で顕著な差が見られます。「家族」の中身は児童手当や介護休業給付などの現役世代向けの支出となっており、デンマークは3.9%、フィンランドは3.3%、ノルウェーは3.2%、スウェーデンは3.7%、日本は1.0%となっています。「積極的労働市場政策」*3や「失業」についても「家族」と同様の現役世代向けの支出であり*4ノルウェーを除いて北欧諸国は日本より高い数値示しています。

現役世代向け支出と高齢者世代向け支出の内訳の比較


ここまでで見えてきた日本と北欧の違いをまとめると、①社会的支出全体は北欧諸国が大きい、②現役世代向けの支出が日本より大きいという2点です。とりわけ②についてわかりやすくまとめたのが以下の表2です。


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表2は、表1を「高齢」「保健」の2つを「高齢者世代向け支出」、そのほかの7項目を「現役世代向け支出」に分けて表したものです。これによれば北欧諸国は、現役世代向け支出:高齢者世代向け支出=4:6(デンマークに限っては5:5に近い)となっており、ある程度のバランスが取れています。他方の日本は、現役世代向け支出:高齢者世代向け支出=2:8で、高齢者世代向け支出に大きく偏っていることが指摘できます。

まとめ


・社会支出は日本より北欧のほうが大きい
・社会支出の内訳を見ると、日本は高齢者向けに偏っている



というのが今回のポイントです。社会保障の充実が割と強調される北欧ですが、数字を見ると実際に充実していることがわかります。加えて本記事では触れていませんが、社会保障に対する支出が大きい割にそれなりに財政状況も健全というのがミソです。これを実現させる背景にあるものが積極的労働市場政策(≒フレキシキュリティ政策)であり、現役世代向け支出です。この辺りは非常に重要なので改めてまとめます。



参考文献・資料
http://www.ipss.go.jp/ss-cost/j/kyuhuhi-h21/5/5.html
http://www.ipss.go.jp/ss-cost/j/kyuhuhi-h18/1/1.html
http://stats.oecd.org/Index.aspx?datasetcode=SOCX_REF#
http://www.ipss.go.jp/ss-cost/j/fsss-h22/4/2.html


北欧モデル 何が政策イノベーションを生み出すのか

北欧モデル 何が政策イノベーションを生み出すのか

*1:http://www.ipss.go.jp/ss-cost/j/kyuhuhi-h21/5/5.html

*2:http://www.ipss.go.jp/ss-cost/j/kyuhuhi-h18/1/1.html

*3:一言で言えば職業訓練のこと。アクティベーションとも呼ばれ、デンマークフレキシキュリティ政策の1つです。これについては北欧の社会システムを理解する上で非常に重要なので別記事にまとめたいと思います。

*4:各項目の説明については、国立社会保障・人口問題研究所『社会保障費用統計(平成22年度)』の巻末参考資料「政策分野別社会支出の項目説明」を参照した。 http://www.ipss.go.jp/ss-cost/j/fsss-h22/4/2.html (閲覧日:2013年10月9日)