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金融政策の波及過程―ケインジアン・アプローチ


以下を事前に読むと、理解がしやすいかと思います。



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以前、金融政策の3つの種類、金融政策は誰が決定するのか、についてまとめました。今回は実行に移された金融政策がどのようにして実体経済に影響を与えるのかという金融政策の波及過程(トランスミッション・メカニズム)について、主要な2つの見解に沿ってまとめていきます。



1つがケインジアン・アプローチと呼ばれ、金利を重視する見解、もう1つがマネタリスト・アプローチと呼ばれる通貨量を重視する見解があります。今回はケインジアン・アプローチに焦点を当ててまとめます。以下詳細。

ケインジアン・アプローチ(金利経由)


ケインジアン・アプローチとは、政策金利を調節することで金融市場金利全般に影響を与え、それが消費・投資・生産・雇用などの実体経済に及んでいくとされるものです。イメージとしては下のような感じです。(参考文献49頁、図表1-8参照)。


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留意点としては、実体経済の変化は実物(モノ=財、サービス=労働力)に対する需要と供給の変化を通じて賃金・物価を変化させるということです。これは体温計に例えられたりするのですが、ここでは賃金や物価が体温計という位置づけとなります。つまり、体(生産・消費・投資)が温まった結果、体温計の目盛り(賃金・物価)が上昇するのであって、その逆ではないということです。



※物価上昇の結果として生産・消費・投資が温まることがないのはわかるのですが、賃金の場合はどうなのでしょう?賃金が上がれば少なくとも消費は温まる気がするのですが。賃金上昇→企業業績逼迫→結局賃金が低下するということなのでしょうかね。ここは参考文献を読んでいてわかりませんでした。誰かわかれば教えてください。

総合判断


このケインジアン・アプローチで問題となるのは、スタートの政策金利の水準をどのように判断するかという点です。伝統的なアプローチとしては、「総合判断」を重視する姿勢を取ります。総合判断とは、できる限り多くの情報を集めることで、そこに潜む様々なリスクを最小限に留めるということです。これをリスクマネージメントと言います。



しかしながら、こうしたアプローチはどうしても主観に陥りがち且つ、政策の決定過程が不透明だという批判があります。これを受けて、より客観的・数量的判断基準はないものか・・・?という議論になります。そこで出てくるのがテイラー・ルールです。これは簡単に言ってしまえば、どのような政策金利が妥当であるかを具体的な数値で示すことができるものです。



しかしながら、これは一定の前提をもとに組み立てられたモデルであり、この前提が崩れてしまえばまったく意味のない数値になるので、各国の中央銀行はこのルールにしたがっていることはないそうです。ただ、以前に比べて中央銀行がこのルールを意識している側面も出てきているようです。

期待


ケインジアン・アプローチについてはもう1つ、期待という重要な問題があります。経済学において期待が重要視され始めたのは1970年代の半ばころからで、合理的期待仮説が一世を風靡しました。この理論は、「合理的に判断し、行動する経済人は、ある経済政策が実行に移される以前にその経路と結果を完全に予想(期待)し、それを前提として行動する*1」というものです。この理論にはそもそもこの前提が現実に当てはまるのか?という議論があるわけですが、その後の経済理論に広く浸透しています。経済人に関してはこの辺りでも触れました。↓↓↓


近代経済の性質―アダム・スミスを軸に - パンダのぼやき



先ほど、政策金利を変更することで短期金利、中長期金利、資産価格、実体経済へと波及すると述べましたが、この期待理論を導入した場合、実際に政策金利を変更する前でも中央銀行が金融政策を行いそうだ!という期待が広まるだけで、様々な金利に影響を与えます。要は心理だけで動くわけです。こう見ると、経済学と心理学は割と近いところにあると言えそうです。



つまり中央銀行の役割として重要なのは、実際に政策金利を動かすこともそうですが、市場との対話によって、中央銀行の意向を市場に伝え、中央銀行が望むような期待を市場に生み出すこと、ということになります。心理に起伏するところが往々にしてあるので、常に不安定性を持っており、完璧な政策を行うことは非常に難しいというのが現状です。


参考文献
・湯本雅士『金融政策入門』岩波書店、2013年

金融政策入門 (岩波新書)

金融政策入門 (岩波新書)

*1:53頁