1つを深めることで周辺分野も見えてくる

ちょっと前にこんなツイートを見かけまして。



これはそうかもしれないなぁと思うところがありました。というのも、私自身大学でこういう経験をしたのです。ということで、これについて自身の経験を踏まえつつ、まとめていきたいと思います。


哲学?やる意味が全くわからん!


大学2年生になって、ゼミの選択がありました。これは体験的な位置づけだったので、3年生になる際にもう一度選択することができるというものでした。とはいえ、個人的にはこの先をある程度規定するものだと思っていたので割と真剣に考えて、その時に自分が一番役に立ちそうだと思ったゼミに入ることにしました。経済系です。



なぜ経済系を選んだのかと言いますと、金回りをある程度理解することは今後生きていくうえで非常に重要だろう!みたいな考えからでした。まぁ漠然としていますね。今思えば真剣に考えたと言う割に、この程度の認識で経済を選択したというのもなかなか滑稽です。



まぁそれはいいとして、私の通う大学(学科)はかなり幅広くゼミを扱っていて、経済や政治、現代史、哲学、法律などなど、いわゆる社会科学を幅広く選択できました。要するに1年生はとりあえず幅広く授業を受けてみて、その中で興味を持ったゼミを選びましょう!みたいなスタンスでした。学部なんてあってないようなものです。



で、ゼミ選択の話に戻るのですが、ゼミ選択の際、自分の中ではこれ(経済)!というのを決めているわけでして、ほかのゼミなんてほとんど眼中にありませんでした。哲学?それ学んで何の役に立つの?やるだけ無駄wwという認識でした。

税制に手をつける


2年生のゼミも終了し、特に不満もなかったのでそのまま同じゼミに所属を決めました。そして3年生のゼミの目標として、懸賞論文の提出(学科内のもの)が義務付けられました。さて、何を書こうか・・・と考えていたちょうどそのころ、野田政権の消費税増税論議が活発だった時期だったので、税金は生きている限り払うものだし、知って損はないだろうということで、税制をテーマにしようと決めました。

税制から財政へと興味の派生


そして日本の税制に関する論文を一応書き上げると(もちろん課題、疑問点は残る)、次は財政を勉強する必要があるなと思うようになりました。税制というのは簡単に言えば「税金をどのように回収するのか」ということです。この回収方法について学んだのであれば、次は財政(税金をどのように配分するのか)に関心を持つのはある意味必然でした。というより、財政の原則的には「量出制入」といって、歳出を決めてから収入を決めるという原則があります。つまり、本来は歳出を決めなければ歳入を決めようがないので、財政を勉強せざるを得なかったというほうが正しいかもしれません。こうして税制から財政という別分野(表裏一体ではあるけれど)へと興味が移っていきました。

財政を学んで哲学へと派生


そしてそのまま卒論は財政をテーマにすることとなったわけですが、財政を勉強していくうちに、どうやら財政(財政学)というのはドイツが出発点にあるということを知りました。ドイツの有名な財政学者にワーグナーシュタインという人たちがいます。そして彼らの考え方(国家観)の根底にはヘーゲルの考え方が踏襲されているのです。言ってみれば、財政を考えるということはそれぞれの国の国家観を考えることであり、その国家観を根拠づけているのが哲学者なのです。ここで初めて哲学を学ぶ意味というのが分かってきました。



ちなみに、ワーグナーらの考え方とは対照的な国家観として原子論的・機械論的国家論というのがあって、これについてもホッブズやロックという哲学者が関わっています。このあたりのイギリス的社会契約論と近いのがかの有名なアダム・スミスです。

まとめ


最後はちょっと専門チックになってしまいましたが、ここで最初のツイートに戻ります。




私の場合は経済系という漠然とした興味の中で、偶然にも消費税論議がさかんだったために税制を論文のテーマとしたのが始まりでした。税制をちょっと深めたことで財政に興味が派生し、財政を論じるということは国家を論じることにつながり、国家を論じているのは哲学者、という流れ中で、最初は哲学を学ぶ意味が全く分かりませんでしたが、税制という一つの興味を深めることで思いもよらず哲学に興味を持ち始めました。どの分野もまだまだ勉強不足なのは確かなのですが。



要するに言いたいのは、何か一つを深めることで、他分野との関連も見えてきて、自分にとっての新しい発見になるので楽しくなってくるということです。とっかかりは何でもいいのだと思います。とりあえず自分の興味を持ったことを掘り下げてみると、自分が知りたかったこと以外を発見できる偶然性みたいな出会いがあったりして面白いです。今回は私の経験上、学問に限った話になりましたが、これは別のことでも同じなのかもしれませんね。こうした経験を大事にしたいものです。


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