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EUの金融取引税について―国境を越える資金にどう課税するか(導入)~金融のグローバル化について~

政治・経済・社会・歴史


グローバル化に伴って、ヒトやモノだけでなく、カネも国境を越えるようになりました。それに伴い、金融危機も発生するようになりました。グローバル化自体は1970年代頃から始まっていたのですが、こうした国境を越えた移動にどう課税するのか?金融危機をどうコントロールするのか?ということが本格的に議論され始めたのは割と最近で、これに関わる税(EUの金融取引税)は2013年に承認されたばかりです。国境を越えるカネへの課税、金融危機のコントロールという論点は今後も重要な問題だと思いますので、このあたりを中心に、何回かに分けてまとめていこうと思います。


とりあえず今回は、議論の前提となる「グローバル化と資本主義経済システムの変化」についてまとめます。

○資本主義経済システムの変化(1970年代~)

グローバル化

:ここでは“ヒト・モノ・カネが国境を越えること”くらいに考えてもらって差し支えありません。中でも本記事は、のちのち税金に関連してくるので、“カネの国境移動”に焦点を当てます。


経済でいうところのグローバル化とは、一般に、貿易・直接投資・金融という3つの局面で国境を越えることを指しています。具体的な数字を出すと長くなりそうなので、簡単にまとめると例えば・・・


世界貿易の規模(1980-2005):この間、実額ベースで5倍
対外直接投資(70年代初頭~80年代):この間、24%から50%へ
国境を越える金融取引(1990-2004):この間、世界のGDPの58%から130%へ


グローバル化が進んだということに焦点を置いていますので、数字、説明不足に関する細かい指摘はご勘弁願います。


☆要するに、70年代以降、とんでもなくグローバル化が進んでいるということです。

・きっかけは?

…1960年代~70年代にかけての多国籍企業の成長です。企業が多国籍化するということは、資本の移動も多国籍化(国境を越える)するということです。

他方で、第2次大戦後の高度成長を支えた国際通貨システムは固定相場制でした。固定相場制というのは、資本の越境に対する規制を前提として成立する仕組みだったため、多国籍企業としては都合が悪く、現在の変動相場制指示へと傾いていきました。

・金融が資本主義を変えた

前述のような流れのなかで、73年には変動相場制が導入され、これによって「金融」が台頭してきます。金融には為替変動リスクもあるわけですが、これに対しては様々な金融派生商品の開発でリスクヘッジしていきました。

⇒これによって、投機的(利ざや目的)な通貨取引が活発化、現在では実需取引をはるかに上回る投機取引量となった。
⇒もはやこの動きを規制することは困難と判断し、資本の越境を規制しようとするのではなく、資本移動に整合的な金融制度に国内システムをつくり変えようという議論へ(=金融自由化へ)

金融の自由化によって、80年代のスウェーデンや日本、2000年代のアメリカと欧州など、いずれも資産バブルの発生とその崩壊を経験することになりました。その簡単な流れとしては・・・

バブルの発生、崩壊→実物経済への悪影響→経済不況


☆つまり、「金融」が「実物経済」を規定するようになったということです。

・まとめ

金融がグローバル化したことによって、金融が実物経済よりも大きな力を持つようになり、金融の失敗が実物経済に大きな影響を与えるような構図が出来上がっているということです。日本ならバブル、アメリカならリーマンショックを想起すればわかりやすいかと思います。80年代の金融自由化の要点や、上記のような構図になっているのであればどうすべきなのか?(金融取引税が有効?)などについては別途まとめます。


参考文献
・諸富徹『私たちはなぜ税金を納めるのか』新潮社、2013年

私たちはなぜ税金を納めるのか: 租税の経済思想史 (新潮選書)

私たちはなぜ税金を納めるのか: 租税の経済思想史 (新潮選書)