インドの経済発展―IT産業とカースト制度


インドの経済発展が目覚ましいですね。これはつい最近に始まったことではありませんが、将来はGDPでアメリカと争うと言われるくらいですので、重要な国であることは確かです。そこで今回は、インドの経済発展について、カースト制度とITの関係からまとめてみたいと思います。

カースト制度とは何か


まずはそもそもカースト制度とは何かを簡単に。カースト制度とはヒンドゥー教における制度のこと。


・4つの階級+指定カースト(不可触民)

カースト:4つの階級のこと。西方から侵入してきたアーリア人がインドの先住民を支配するために定めたもの。


その4つとは:
バラモン(司祭)、クシャトリヤ(王族・戦士)、ヴァイシャ(商人・庶民)、シュードラ(奴隷)のこと。バラモンがピラミッドのトップで、シュードラが一番下になる。更にその下には指定カースト(不可触民)と呼ばれる、ピラミッドにも入れない、人間扱いされない人々も存在した。


※ちなみに、あの有名なガンジーは、指定カーストの人々を「ハリジャン(神の子)」と呼んで慈しんだそうです。


1950年にインド憲法が制定されて、カースト制度による差別は禁止されましたが、現在のインドでもカースト制度は根強く残っているのが現状。


なぜ、インドが目覚ましい発展を遂げたのか?

湾岸戦争

インドが目覚ましい経済発展を遂げた背景に、湾岸戦争があります。

湾岸戦争
1990年、イラククウェートに攻め込んだことを背景に、アメリカを中心とする多国籍軍イラクを攻撃したもの。


インドの国内市場は、1947年にイギリスから独立して以来、湾岸戦争まで閉鎖状態でした。しかし、湾岸戦争によって、中東への出稼ぎが困難になり、インド経済は窮地に追い込まれます。


そこで、当面の危機を回避するためにIMFから資金を借り入れ、国内経済の仕組みを変革、国を開きました。それによって海外企業がインドに進出しやすくなりました。

・経済発展の原動力―IT産業

この時の経済をけん引したのがIT産業でした。カースト制度というのは、職種が代々受け継がれるものなので、低いカーストから基本的に抜け出せません。しかし、IT産業というのは新しい職種のため、カーストに組み込まれていませんでした。したがって、IT産業はカーストから抜け出すための「インディアン・ドリーム」だったのです。カーストから抜け出すというのがインセンティブになって、経済をけん引したと言えるかもしれません。

・英語と数学に強いインド人

また、インドがかつてイギリスの植民地だった関係から、英語を話せる人が多く、更に数学にも強い(九九を二桁まで覚えるなど)という点も経済発展に貢献したと言えます。

まとめ


インドの経済発展を理解するためのキーワードとしては・・・


湾岸戦争カースト制度、IT産業、英語と数学に強い


というのが挙げられるかと思います。



経済発展に宗教が絡んでいるというのは面白いですね。



参考文献
池上彰『図解]池上彰の 世界の宗教が面白いほどわかる本』中経文庫、2013年