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アダム・スミスの生きた時代―なぜ分業を提唱したのか

政治・経済・社会・歴史

 

前回はアダム・スミスが『社会的分業』を提唱したという記事を書きました。今回は、なぜスミスは分業を提唱したのか、について書きたいと思います。

 

○スミスの生きた時代

・18C、イギリス:『重商主義』が基本的な経済上の考え方であった。

 

重商主義…政府が商業を保護して貿易差額を生み、金銀を確保する政策のこと。

 

具体的には…当時は「貨幣(金銀)こそが富」という考え方で、金銀さえあれば何でも買えたので、金銀を欲していた→金銀がない国は?→政府が介入して特産品を育成、輸出→一方で関税、輸入制限などで輸入は抑える→その差額で金銀を得る

重商主義

 

・なぜ重商主義がはやったのか?(歴史的背景)

15C末の新大陸発見→16,17Cにヨーロッパへ大量の富が流入

大航海時代:ヨーロッパ、新大陸、アジアが結びつけられるいわば最初の「グローバル化」

※これをイマニュエル・ウォーラーステインが「世界システム」の形成と呼んだ

 

世界システムの形成によって、モノや富が流入した。ヨーロッパ人にとってはアジアの特産品(綿花、茶、香辛料)や新大陸の特産品(タバコ、砂糖)が大人気で、大量消費をした。

⇒ヨーロッパの宮廷文化(上層階級)を軸にした「消費革命」による経済発展

※現在の社会も見方によっては重商主義と近いところがあるかもしれませんね

 

☆このように、金銀を手に入れるためには重商主義が一番手っ取り早かったために、重商主義が世界に広がったのです。

 

○なぜスミスは重商主義を批判したか

⇒前述したような時代の通念をスミスは批判

なぜか?

重商主義は一国の富をあまりに不確定性の高い、不安定な構造の上に置き、自然の秩序を崩すから

⇒すなわち、グローバルな商業と、それを支える巨大な財政基盤も単なる「信用」に基づいているために不安定。「信用」を見ず知らずの人に委ねるのは不安定性が高い

⇒スミス:重商主義は経済を「人為的なもの」によって支えようとした、と表現

=経済の持つ「自然」の構造を歪めてしまったと言う

 

では、自然の構造とは?

⇒まずは身近な土地に働きかける「労働」から始めること

土地に働きかける労働はまず「農業」を発展→次に「製造業」(手工業)→農産物や工業品を交換・流通させるための「商業」が発展→国内が飽和したら「外国貿易」

=「事物の自然の秩序」

⇒こうした考え方から自由主義を擁護する主張へ

 

改めて、重商主義反対の理由:人間の「性向」にかなった「自然の秩序」を崩すから!

⇒自分が十分に知ることのできない遠い国の人々に信頼を与えることは不確実な要素を彼らに委ねることになるから

※人間の性向とは、「人々は何よりもまず不確かなものを避け、身近にあって良く知っているものを大切にしようとする」といういわば人間の本性

 

☆ここで言いたいのは、順序が逆だということ(貿易ではなく身近な労働から始めましょう)

⇒海外貿易から始める(重商主義)→これは「人為的」なもので「自然秩序」に反する→だから政府は余計な「人為」をはずして「自由」にすればおのずと「自然秩序」が実現するということ⇒これが周知の「見えざる手」

 

・改めてスミスの主張を確認

重商主義:「貨幣こそが富である」

スミス:「労働こそが富である」

労働こそが富である:アジアのモノを買うには貨幣が必要→貨幣を得るにはモノを売る→モノを売るにはモノを作る→モノを作るのは労働、という論理

☆労働こそが「根源的な価値」であるという主張

では、その労働の生産性を高めるにはどうすれば良いか?を考えると…

⇒ここで「分業」が提唱される

 

分業については…↓

社会的分業と市場の成立 - パンダのぼやき

 

 

この「分業」によって分散された生産要素や生産物を結ぶために自由な「市場」を形成し、この「分業」と「自由市場」によって一国の生産性が高まり、お互いに豊かになれると考えた。

☆ここで重要なのは、全ては国内の労働による生産性の向上、生産物の増大を主張している点である。国内の労働を固めて自然に任せれば上手くいくという主張。

 

※現代日本にはめると、TPPの前にやるべきことがあるかも。と考えたくなります。

 

・「大地」に根差した経済を擁護

スミスのやろうとしたこと:当時のグローバル化状況の中でそれに抗して、より確かな基盤をまずは国内生産力の強化に求めること

それで余ったら相互貿易すれば良い(この発展がリカード「比較優位説」)

 

こうしてみると、「見えざる手」の部分だけ切り取って何でも市場に任せればよいというのはちょっと違うかな?というのがわかると思います。

 

 

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