なぜ待機児童が増えたのか

 

待機児童について、横浜市の待機児童ゼロ報道もあって少し気になったので考えてみました。というのも、待機児童がいっぱいで大変だ!とよく騒がれますが、そもそもどうして待機児童が増えたのかがイマイチわからないからです。ずいぶん前から少子化対策についてもよく話題になりますが、これが話題になるということは、子供の数は減っているということだと思います。だとしたら、今までより子供の数が減っているのだから、待機児童なんて問題にならなくないか?と思ったのです。ということで少し調べてみたのでまとめます。

 

まずはこどもの数から確認していきます。総務省統計局によれば、こどもの数は32年連続で減少しているそうです。ここでのこどもとは、15歳未満の人口のことです。本当は小学生未満の長期推移データがほしかったのですが、適切なデータが見つからなかったので15歳未満の人口推移を参照します。少子化が騒がれている昨今ですので、小学生未満のこどもに限定しても基本的には減っていると考えてよいでしょう(あくまで予想ですが)。

総人口に占めるこどもの割合をみても、39年連続で低下しています。オイルショックの後あたりからこどもの数って減っているのですね。こどもの減少はもう少し最近の話かと思っていました。新しい発見。

 

次に保育所の数の確認です。厚生労働省のデータによれば、保育所の数は年々増えています(H16 H23)。これに合わせるように定員は増えましたが、同時に保育所利用児童数も増え続けています。他方の幼稚園の園数は、総務省統計局によると毎年減少しています(H1H24)。在園者数は園数ほどではないにしろ、減少傾向と言えそうです。これらの点から、保育所に関しては供給が需要に追い付いていないことがわかります。幼稚園に関しては園数も減少傾向だし、需要もそんなにないといったところでしょうか。

 

 

では、どうして保育所ばかり需要が大きくなるのでしょうか。それは①保育所と幼稚園の違い②社会の変化を把握するとわかります。

①の保育所と幼稚園の違いとは、根拠法令の違いから、保育所は保育を行う場、幼稚園は教育を行う場というように、そもそもの目的が異なるという点です。これに関連して、保育所と幼稚園では入所年齢や保育時間が異なります。保育所は一歳未満から入れるのに対し、幼稚園は満3歳からの入所となります。保育時間も、保育所は原則8時間、延長も可能な一方で、幼稚園は4時間が標準です。

②の社会の変化とは、女性の社会進出と家族の変容です。近年では女性の社会進出が進んでいると言われています。今までは専業主婦だった人々が働き始めたり、子供ができても働き続けたいと考える人が増えているので、こどもを安心して預けられる環境、つまり保育所への需要が必然的に大きくなるのです。また、家族の変容も重要です。かつては2世帯で住むことが普通でした。仮に女性が働き始めたとしても、こどもの面倒を見るという環境が「家庭内」にあったのです。しかし今日では核家族化が進み、2世帯で住むことも減りました。こうした状況も保育所への需要を高めていると考えられます。要するに、こどもの数は減っているのに待機児童が増えているという現象は、社会の変化が原因だと言えそうです。今までは家庭が保育を担うことで問題が表に出てこなかったのですが、社会の要請が変わることで問題が顕在化したのです。

 

 

だとすれば、この解決策は社会の要請に応えることで解決できそうです。単純な話から言えば、保育所を増やすということでしょう。もしくは幼稚園に関しては、空きがあるところもあるみたいなので、幼稚園に保育所の機能を持たせることも重要です。この意味で認定こども園はどんどん増えてほしいですね。また、待機児童は全国的に起きているものではなく、地方では待機児童ゼロの自治体もあるみたいです。待機児童問題は東京一極集中の弊害と言えそうです。地方に空きがあるのなら、地方に人口を移動させる政策も効果があるかもしれません(どんな政策かはわかりませんが)。あと、個人的に思う解決策は、高齢者施設をうまく使えないかなと思ったりしています。1歳ぐらいだと厳しいかもしれませんが、ある程度の年齢の子どもなら、老人ホームの方々と交流することで先人の知恵を得たり、高齢者はこどもとの交流を通して新たな喜びを見いだせるかもしれませんので、お互いにメリットがありそうな気がします。

 

 待機児童の解消に関しては参院選の公約でもすべての党で一致しているものだと思いますので、あとは実行あるのみです。ぜひとも頑張っていただきたい。

 

 

参考資料

・厚労省「保育所待機児童数」http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002yapj.html (閲覧日:201376)

・同上「保育所利用児童数等の状況」

http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001q77g.html (閲覧日:201376)

総務省統計局「我が国のこどもの数」

http://www.stat.go.jp/data/jinsui/topics/topi701.htm#I-1 (閲覧日:201376)

・同上「幼稚園の園数」

http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?bid=000001015843&cycode=0 (閲覧日:201376)

・「東京大学で子育て」http://www.iam.u-tokyo.ac.jp/hoiku/01.html (閲覧日:201376)

・ウィキペディア「待機児童」

 

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BE%85%E6%A9%9F%E5%85%90%E7%AB%A5 (閲覧日:201376)